会社の入っている同じビルに、ぼくと同じようにバイク通勤をしている人がいるらしい。とはいっても、都内で駅から近いそのビル は公式な駐輪場を設けていないので、バイク通勤といっても近くの茂みに止めてあるだけだ。そのバイクの持ち主とはまだ顔を合わせたことはない。勤務時間帯 が微妙にぼくと違うらしく、朝はぼくの方がいつも早いし、夜帰るときは彼(彼女?)のバイクはまだそこに止めてある。ところがここ数日、そのレーサーレプ リカのバイクを見ることがなかった。「病気かな?それとも辞めちゃったのかなぁ」と、すこし心配をしていたのだが、最近やっと復活したみたいだ。ひとごと だけど、ちょっとホッとした。帰り際、辺りが薄暗くなってもじっとライダーを待ち続けるそのバイクに「お先に」と小さく声をかけた。