[書籍] うつに非ず

拡張期血圧5mmHgの基準の違いは世界中で何億という人々を高血圧患者に変え、降圧剤を扱う製薬会社の利益を莫大なものとした。(中略)うつ病も、高血圧のたどった道を歩もうとしている。かつて企業が合理化・リストラで労働者を抑圧していると捉えられた問題が、今はうつ病とされる。(p.p.70〜71)

不眠が長く続くのならば、環境に問題があり、同時に自分の受け止め方にも問題があると考えたほうがよい。ただし、自分の受け止め方にだけ問題があるという考え方はすべきではない。そうすると環境に適応するしかなく、絶え間ない適応が強いられる。適応できない自分を弱者として認識するほかはなくなってしまう。 (p.p.183〜184)

集団認知行動療法や1人でできる認知行動療法が喧伝されているが、それは認知療法の創始者である A. T. ベックが望んだものとは違っている。認知行動療法では現実を正しく認知することを求め、そのために治療者との対話が重視される。何でも肯定的に受け止めるように説得したり、ワークシートを埋めたりするものではない。(p.171)

社会の問題には目をつむって、そこから落ちこぼれた人を社会不適合者と位置づけて、あまり効きもしない中毒性の高い危険なクスリを処方して、一生その状況から逃れられないようにする。ほとんどの精神科医は、患者を元の状態に治したいなどとは思ってさえいないのだ。

[amazonjs asin=”4062184494″ locale=”JP” title=”うつに非ず うつ病の真実と精神医療の罪”]